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2021.03.19
〜スポーツの社会的価値を可視化する初の実証実験〜 NPO法人松本山雅スポーツクラブが実施する巡回サッカー教室のSROI値(社会的投資収益率)を算出
株式会社フューチャーセッションズ (本社:東京都渋⾕区、代表取締役社⻑:有福英幸)が主宰する「Sports Social Impact Lab」(スポーツソーシャルインパクトラボ)は、Jリーグ・松本山雅FCの普及事業を展開している、特定⾮営利活動法⼈松本⼭雅スポーツクラブの協力のもと、スポーツの価値を活用した社会貢献活動がもたらすポジティブな影響を可視化する、日本で初めての実証実験を実施しました。
◆スポーツを活用した社会貢献活動の効果測定に取り組む背景
株式会社フューチャーセッションズでは、これまで複数のステークホルダーと共に、まちづくりと新価値創造の共創事業に取り組んでまいりました。中でも、J リーグが地域社会とともに地域共通のテーマや課題解決に取り組むJリーグ地域社会連携「シャレン!」や、ラグビーワールドカップ日本大会での成果を生かしたまちづくりを掲げる釜石市との取り組みなどを通して、地域社会に対するスポーツの役割への期待の大きさを実感しております。
より多くのステークホルダーがスポーツの価値を活用した地域貢献活動を積極的に行うことができる社会の実現を目指して、株式会社フューチャーセッションズ が主宰するSports Social Impact Lab(スポーツソーシャルインパクトラボ)では、元FIFAコンサルタントの杉原海太氏(スポーツコンサルタント)、押見大地氏(東海大学体育学部スポーツ・レジャーマネジメント学科講師)、山口志郎氏(流通科学大学人間社会学部人間健康学科准教授)、福原崇之氏(北海道教育大学芸術・スポーツ文化学科准教授)と共に、「社会的投資収益率(以下、SROI: Social Return on Investment)」の考え⽅を⽤いて、経済的価値だけでなく、活動によってもたらされた社会的価値(社会的インパクト)も定量的に評価し、社会貢献活動に関する費用対効果を算出するSROI算出モデルの構築に取り組んでいます。
この度、Jリーグ・松本山雅FCの普及事業を担う特定⾮営利活動法⼈松本⼭雅スポーツクラブの協⼒のもと、松本山雅FCの実施する地域貢献活動による社会的価値効果測定の実証実験を実施いたしましたので、その結果についてご報告いたします。
◆SROI算出のモデルケースについて
モデルケース概要
松本山雅FCのホームタウン活動の一つである、競技団体、各保育園、幼稚園等のからの委託を受けて実施する巡回サッカー教室をモデルケースに特定。
松本山雅FCは、ホームタウンである長野県松本市、塩尻市、山形村、安曇野市、大町市、池田町、生坂村、箕輪町、朝日村で、年間649回(2019年度)のホームタウン活動を実施しており、その中でサッカーを通じて地域の子どもたちにスポーツの楽しさを伝える普及活動である巡回サッカー教室は、年間129回(2019年度)実施。※運動教室含む。
実証について
本件について、ステークホルダーを①プロスポーツクラブ(松本山雅FC、巡回スタッフ)、②民間企業(地域メディア)、③保育園(保育園教諭、保育園児、保護者)、④その他(競技団体、松本山雅FCのホームタウン9市町村)と特定し、ステークホルダーのインタビュー調査を実施しました。
インタビューから抽出された活動成果(図2内アウトカム)には、巡回サッカー教室の目的であるスポーツの楽しさを伝える普及活動の枠を超えた、多面的な成果を実感しているステークホルダーが多いことが確認されました。
SROI値の算出
巡回サッカー教室におけるSROIの算出は、インプット(ステークホルダーの資本投資、労働時間など)、アウトプット(ステークホルダーにもたらされたインパクトの合計)によって算出されます。
本事業に投資されたインプット対し、事業が生み出した社会的価値を貨幣価値に換算すると、7.2 倍になることが確認されました。
◆実証実験の結果について
国外では、UEFAヨーロッパリーグでスポーツにおけるSROIに関する先行的な取り組みがあるものの、まだ多くの事例は見受けられておりません。日本国内においては、プロスポーツが関わる社会貢献活動の効果実証研究においては、本研究が初めての実証ケースとなります。
地域貢献活動によって生まれた社会的インパクトを可視化することは、活動成果を共通認識とすることを可能にし、ステークホルダーによる積極的、継続的な社会貢献活動の後押しとなるなど、ステークホルダーエンゲージメント強化にも非常に有効であると考えられます。
世界では、企業が株主第一主義で利益を追求していた時代から、より多様なステークホルダーに対して価値を提供することを目指す“ステークホルダー主義”への移行が進んでおります。Sports Social Impact Labでは今後も実証を重ね、より多様なケースに対応できるモデル構築に取り組んで参ります。
押見大地 氏
東海大学体育学部スポーツ・レジャーマネジメント学科講師
「何となく良いもの」と感じるスポーツの無形価値を特定し、金銭的価値に落とし込むのがSROIの特徴です。学術界でもその取り組み数が少なく、我々プロジェクトチームにとってもチャレンジングな事業でしたが、一つの成果を出せたことを心より嬉しく思います。将来的には、事例を重ねることでより簡易で精度の高いシステムを構築し、スポーツが持つ多様な価値の「見える化」に繋ればと考えております。最後に、本プロジェクトの調査にご協力頂きました関係者各位に心より御礼申し上げます。
⻘⽊雅晃 ⽒
特定⾮営利活動法⼈ 松本⼭雅スポーツクラブ理事⻑
本プロジェクトを通じ、弊クラブの巡回指導を多面的な角度から分析していただきました。結果として出てきた数値もさることながら、多様なステークホルダーへのインタビュー調査を通して、クラブ側も想定していなかったような価値を見出すことができました。クラブだけではなし得ない知見を獲得できたと感じております。
今回分析していただいた巡回教室はもちろんのこと、スポーツの普及活動をこれからも推進・拡大し、スポーツを通して幸せな国をつくる一助となるようクラブ一丸引き続き努力してまいります。
杉原海太 ⽒
コンサルタント
地域密着を掲げるJリーグのクラブは、長年数多くのホームタウン活動を行っているが、2019年度Jリーグホームタウン活動調査によれば、その数は年間活動総数25,287回、1クラブ平均の年間活動数459回となっており、Jリーグのクラブの地域密着度合いを改めて実感させる。
一方で、クラブ経営の観点からすると、数字で明確に効果が測定される強化や事業等の領域に比べ、ホームタウン活動はその効果が測定しづらい領域であり、どの程度のリソースを割き、どの程度の効果を目標とすれば良いか、判断が難しい領域と考えられる。
その観点からすると、多くのJリーグのクラブにおいてホームタウン活動の一環として実施されているサッカー教室の社会的インパクトを数値で明示できた事は非常に意義深く、今後ホームタウン活動に関するクラブの効率的な経営判断に寄与する事は勿論の事、地域におけるステークホルダーの「クラブの存在意義」に対する納得感の更なる醸成などに寄与する事も期待できるのではないだろうか。
《本件に関するお問い合わせ先》
株式会社フューチャーセッションズ
〒150-0002 東京都渋⾕区渋⾕ 3-10-5 TOHTAM ビル 4F
sports-pr@futuresessions.com (⽥上、大村)
《NPO松本山雅スポーツクラブに関するお問い合わせ先》
電話:0263-88-5491 (青木)
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