プロジェクト事例 PROJECTS
【自主企画セッション】共創総会#2

共創の体現:参加者とともに問い自体を生成し、共創をはじめる

概要

プロジェクト期間
2024年6月26日(水) 14:00〜20:00
課題・背景
対話テーマを事前に決めずに問いを生み、共創を体現する
支援内容
対話イベント企画・ファシリテーション
体制

フューチャーセッションズ全社員

フューチャーセッションズでは、共創を次の段階に進めていくために、私たちが”今”深めたいテーマを設定し、大切な方々をお招きした自主企画セッション「共創総会」を半年に1回のペースで開催しています。

フューチャーセッションズが設立12年目を迎えた2024年6月に開催された共創総会のグランドテーマは「共創の体現」。
対話のテーマ、落とし所、一人ひとりの役割はあえて事前に決めず、その時間、その場、そのメンバーだからこそ生まれる問いや共創をそれぞれが楽しみました。

ストーリー

【オープニング:開催挨拶とチェックイン】

平日の14時に開催された今回の共創総会には34名もの方が参加してくださいました。14時からセッションが始まる15時までの交流タイムにも、会場に多くの参加者がいらっしゃり、お互いに自己紹介をしたり、どのような経緯で共創総会に参加することになったのか、フューチャーセッションズとの関わりについて語り合う様子が見られました。

15時になるといよいよオープニングトークがスタートします。
はじめに、代表の有福から今回の共創総会の目的についてお話ししました。

有福)私たちフューチャーセッションズは誰もが希望を持ち、自分の信じられる未来を実現することを目指しています。そのような大きなビジョンは、今日参加してくださった皆さまをはじめ、より多くの方々と共創していく必要があると感じています。
そして、より共創の輪を広げていくことができるプラットフォームや多様な方々とネットワークをつくり、対話の方法論、問い、アイデアを社会に広げていきたいと思っています。

 

続けて、有福は今回の共創総会のグランドテーマの選定理由について説明します。

有福)前回の共創総会は「AI、自然、人間との共創」というグランドテーマに沿って対話を行いました。今回のテーマをどうしようか悩んだのですが、「共創とは何か」という問いに基づいて、共創そのものを皆さんと一緒に体現してみたいと思いました。今回は、問いはもちろん、対話の落とし所、一人ひとりの役割もあえて決めていません。この時間、場、メンバーだからこそ生まれる問いや共創をぜひ一緒に楽しみましょう。

その後はチェックインとして、サークル状になり、参加者一人ひとりが名前に加え、普段取り組んでいることを「問い」で表現して、一言ずつ自己紹介を行いました。
「難しいことを面白くするにはどうしたら良いか?」「どうしたら週休3日を実現できるのか?」「どうしたら日本を豊かにする共創の場をつくれるか?」「『住みやすい街』とは何か?」など、多様な問いに取り組む参加者が集まりました。

【オープンスペーステクノロジー(OST)の説明】

今回のセッションは「オープンスペーステクノロジー」(以下、OST)という対話の手法を用いて行われました。対話を始める前に、OSTの流れについて、説明が行われます。

未来デザインチームセッションの様子

OSTの流れは下記の通りです。今回の対話は下記のシンプルな流れに沿って進められます。

①その場に集まった人から話したい問いを募集
②問いごとに分かれて対話を実施
③対話を通じて生まれた気づきを共有

続いて、OSTにおいて参加者が念頭におくべき原則と役割が会の進行を務める富田・橋本から説明されます。OSTの参加者は立場に関係なく誰もが適任者であり、予想外のことが起こっても対話が前進していくきっかけとして受け入れるのが原則です。また、対話の始まりや終わりのタイミングにもこだわる必要がありません。

OSTの原則
①この場にやってきた人はだれもが適任者である
②何が起ころうと起きるべきことが起きる
③始まるべき時に始まる
④終わるべき時に終わる

参加者の役割
①参加者はどの問いに参加することも自由であり、場に貢献できないと感じた時には自由に移動することができる
②じっくりと話を聴いたり、次から次へと対話に参加してより多くの情報を参加者に提供するなど、貢献の仕方は自由

OSTを実践してみたい、と参加した方もいらっしゃいました。

【問いの募集】

OSTの説明の後は、参加者から問いを募集しました。問いは、参加者全員が提示する必要はなく、想いを持った方から提示していただきました。

対話テーマとなる問いを思いついたら、A4用紙に書き留めます

迷わずペンをとって問いを書き出す人、自身が普段取り組んでいる問いを書き出す人、周囲との会話の中で問いを見つける人もいらっしゃいました。

10分ほど経った後、提示された問いを共有します。似たテーマを統合した結果、今回は9つもの問いが生まれました。フューチャーセッションズのメンバーも予想を上回る数の問いに驚いている様子でした。


「この数年で共創はどう変わった?変わるべき?」
「キャンプ場で働くことが当たり前の世の中になるためには?」
「大学設置のフューチャーセンターににぎわいをもたらすには?」
「大きな組織で部署などの垣根を越えたつながりをつくるには?」
「移民の力を活かし、地方の機会のギャップを埋めるにはどうするべきか?」
「日本の若者が行動を起こすエネルギーをどう引き出す?」
「日本で週休3日制を実現し、幸せな国になるためには?」
「組織の中で一人ひとりが自ら共創をはじめる風土をつくるには?」
「どんな食の未来を世界の人々と共有すべきか?」

という、自身が日頃取り組んでいる問いや、関心のあることに基づいて多様な問いが生まれました。

【問いごとに分かれて対話を開始】

参加者とフューチャーセッションズのメンバーは、それぞれ対話してみたいテーマを選び、3〜5名程度のグループに分かれ輪になります。いよいよ対話のスタートです。

各自が素直に感じたことを言語化しながら対話に臨み、お互いの話を聴くことで新たな気づきも得たようでした。時には笑いも起こるなど和やかなムードで対話が進みました。

実際にどのような対話が行われたか、2つのグループの例をご紹介します。


「この数年で共創はどのように変わったか?変わるべきか」という問いをテーマにしたチームでは、近年の共創のあり方を「Before」と「After」に分類しながら対話を進めました。


「私がこの問いを立てた理由は、近年、共創のあり方が変化していると感じたからです。以前は、知り合いに声をかけてイベント的に集めたメンバーで共創をはじめるのが主流だった。ところが最近は共創のテーマがあらかじめ決まっていて、そこに興味がある人たちが集まって共創をスタートすることが増えているなと感じています」

「共創の参加者のあり方が変わっている、ということですね。面白い問いだと思いました。私がさらに掘り下げたいと思ったのは、参加者のあり方が変化すると共創のテーマも変わるのではないかということです」

「確かに、以前は『まちづくり』というテーマだったのが、『まちづくりのための祭りのあり方』など、より具体的な共創テーマを見かける機会が増えている気がします」

「共創のあり方が変化している理由はなんだと思いますか?」

「私は、原因の一つとして『働き方改革』が進んだことが挙げられると思います。『限られた時間内でいかに効率よく対話を行うか』ということに意識が向いた結果、テーマが明確な共創の場に参加する人が増えたのではないかと」

「私もタイムパフォーマンスを重視したいと思いますが、一方で、テーマが明確でそれに興味のある人だけ集まって行われる場から真の共創やイノベーションが生まれるのか?という疑問があります。似たもの同士が集まって対話しても、予想もつかないようなアウトプットって生まれない気もするんですよね」

「分かります。私もどちらかというと、偶然集まった人の中から生まれる問いや共創が面白いなと感じます」

「『共創』という言葉はかなり社会にも浸透してきましたが、『協業』の意味と混同されているなと感じることもあります。協業とは自分のコミットメントに対して見返りを求める『ギブアンドテイク』の精神から生まれるもの。一方共創は『社会を良くしたい』という想いから始まるので見返りを求めない。『ギブアンドギブ』の精神で成り立っているんです。共創と協業が混同しているから、共創の場で参加者同士のギャップが生まれてしまっていると感じることもあります」

「共創に参加したいという人が増えてきた一方で、認識のズレがあるということですね。そこは、共創とは何かということや、対話の進め方について学べる機会を提供することで解決していけそうです」

「参加者が増えていること自体、いいことだと思うので、Beforeの共創のあり方、Afterの共創のあり方のいいとこどりをしていけると一番良いですよね」

また、「どんな食の未来を世界の人々と共有するべきか?」をテーマに対話を行ったチームの話題は「エシカルフード(※)を選択する人を世の中に増やすにはどうしたら良いか?」という内容に。

※エシカルフード…人や社会や環境に配慮した食品のこと。例えば、生産者に正当な対価を支払うフェアトレード食品のほか、無農薬・有機栽培の食材、ロスになる食材を活用した商品など。

「例えば、1個10円の卵と、1個60円のエシカルな卵があるとして。1個60円の卵を毎日買える人はまだまだ少ないと思います。その理由は、そもそもエシカルの意味を知らない場合と、知っているけど高額な食材を毎日買うことはできないという場合があると思います」

「知らない人には、知ってもらうということがまず大事になってきますね。エシカルな商品だと分かっていても高くて買えない、という人にはどうしたら買ってもらえるようになるんでしょうね?」

「生活の中で何にお金をかけるか考えて、支出にメリハリをつけることも1つの方法ではないでしょうか。例えば、食には惜しみなくお金を使うけど、衣服にはそこまでお金をかけない、という人もいますよね」

「まずは、10回に1回でもいいからエシカルフードを選択してもらうだけでも変わるのではないでしょうか?10回に1回選択する人が増えたら、大きなインパクトになっていくかもしれません」

「たしかに!エシカルフードを選択するきっかけはどのようにつくったらいいんでしょうね?『地球環境が危ない!できることをやろう!』などという少し危機感を煽るようなワードもありますが、ネガティブになって行動に結びつかないことも多い気がします」

「同感です。危機感を煽るよりも良い方法がありそうな気がします」

「『エシカルってかっこいい!』と思えるような仕掛けをつくるのはどうでしょう?例えば、デザインの力を借りながらクールなパッケージの商品をつくって、多くの方の手にとってもらえるようにする。手にとってもらった結果、実はそれがエシカルフードでした、みたいな」

「いいですね。『エシカル』って遠い存在で、とっつきづらい響きがあるけど、もっとフランクでカジュアルに選んでもらえる存在だということを認識してもらえると良いですよね」

「たしかに、エシカルな商品を選択することだけでなく、環境にやさしい取り組みなども、『これを選びなさい!こういう風にしなさい!』と押し付けられているように感じることが多いですよね」

「やらされているというネガティブな感情ではなく、『かっこいいから買う、楽しいからやる』というポジティブな感情を生むことがまず大事そうですね」

「それ、とても大事ですね!選択の際に『楽しむ』という要素を含むことは、エシカルフードの問題だけでなく、環境問題、政治の問題、あらゆる社会課題解決のヒントを含んでいそうです」

参加者は各自OSTの原則・役割に従い、自由に輪に加わりながら90分間の対話の時間を過ごしました。

【中間報告:気づきの共有】

約90分間の対話の後、各テーマでの対話を通じて生まれたアイデア・気づきを共有する中間報告の時間に移ります。対話に集中するあまり「もうこんなに時間が経っていたの!」と驚く参加者の姿も見えました。

今回、各テーマの対話は、リアルタイムで対話をグラフィックに変換するビジュアルコミュニケーションシステム「Piglyph(ピグリフ)」を用いて、イラストと図を使いながら分かりやすく可視化されました。

対話を通じて問いを掘り下げる中で、異なるテーマ同士が共通の問いを見つけ同じチームで対話を始める場面も。その場で自然と発生した対話を素直に受け入れ、楽しむ参加者の姿が見受けられました。

【軽食タイム】

対話も盛り上がりを見せた18時、ブレイクタイムも兼ねて軽食とドリンクを楽しむ時間になりました。

今回会場に用意された軽食のテーマは「サステナブル」。端材として捨てられてしまう野菜など、ロスになってしまう食品を活用したり、盛り付けや取り分けの器にも極力プラスチックを使用しない方法を用いて提供されました。


「食のストーリーを聞いてからいただくと、より一層おいしい!」という声が次々に挙がっていました。

【対話の再開・チェックアウト】

軽食をいただきながら、対話の続きを再開。よりリラックスした様子で引き続き対話は盛り上がりを見せました。前半の時間より自由に対話を楽しむことで、新たな問いが生まれた参加者もいたようです。


90分ほどの対話を楽しんだ後は、チェックアウトとして各自が感想や気づきを発表しました。

「普段、異なる業界の人と話す機会がないので、多様な立場の方の意見を聴くことができて、本当に楽しかった!ビジネスは成果を求めるけれど、今日のようにすぐに成果を求めすぎず、とにかく柔軟な姿勢で自由に対話を広げる時間によってしか得られないものがある。このような場に参加できてとても嬉しかったです」

「対話の中で『社会をより良くするために見返りを求めず、ギブの精神を持った人が集まるからこそ真の共創が生まれるのではないか』という話をした方がいらして、とても興味深かったです。私も対話の場づくりをしているので、より良い場にしていくためにとても参考になる気づきを得ることができました」

 

「同じ悩みを持つ方に出会えて、気づきを得ることができました。自分一人で悩んでいたことが、実は多くの人の悩みでもあり、社会が抱える課題につながっているのかもしれないと思いました。今日のように柔らかい雰囲気で対話をして盛り上がれる場を、社内にもつくっていけたらいいなと思いました」

「テーマはなくても、ここまで共創を体現できたことに驚きと可能性を感じました。人が集まることで生まれる共創のパワーを体感できました」

 

最初は少しの緊張と期待感が入り混じる空気だった場は、約5時間のセッションを経てリラックスした、かつ一体感も感じる空気に。人が集まり、問いが生まれ、対話が広がり、気づきを得たり、新たな問いを見つける。それぞれが、自然と発生する対話を楽しみながら「共創の体現」の過程を共有する時間となりました。


この場に参加した者同士がつながるシーンも数多くありました。今後も共創の輪は広がり続けます。

PROJECTS INDEX